
私と森との話。
友達はいた。
しかし気軽に遊びに行ける距離ではなく、
いつも私は独り虫網を手に森へ出かけた。
虫の声。
川のせせらぎ。
木々の話し声。
そして時折感じた生温い気配。
静かでいて賑やかな。
そんな世界がどこまでも心地よかった。
そんな私は今雑踏の中にいる。
ここでは足を休ませる暇はなく、
心はいつも抵抗している。
しかし私には帰る場所がある。
目を閉じれば、風と葉が身を寄せ合い
音を奏でている。
どこにいても、どんな時でも
私はあの森へ帰れるのだ。
私は人間に可能性を感じる。
己の醜さ、美しさ。
それらを表現する喜びを
私は知ってしまった。
野花のようにはなりたくても、
野花になりたいとは思わない。
私はどこまでも美しい人間でありたい。
そして私の創りあげるものは全てそうであれと願っている。
この言葉たちも。
音楽も。
これは私という森の囁き。
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